日本刀を管理する上で心配になるのが錆びの発生です。鉄がさびるのは一般的には空気(酸素)と水が原因ですが、特別に鉄を水に濡らさなくても空気中に含まれる水分、即ち湿度がある程度高くなると鉄の表面に目に見えない薄い水の膜が出来て腐食が進みます。刀剣を管理するには目に見えない水に充分注意をすることが大事になってきます。
1.結露に注意すること。
刀剣を冷えた部屋から持ち出し暖かい部屋で鞘を払うと、刀身の温度が周囲の空気より下がって刀身表面の湿度が100%となります。結露した刀身の表面には水滴が出来ます。
2.刀身を直接手で触らないこと。
汗ばんだ手で刀身に触れると、手についた塩分が付着します。塩分には吸湿性があり湿度がある程度高いと水を吸います。吸湿によって得られた僅かな水分で錆びます。
また、水分を引き寄せる要因に、塵のような多孔質の物質の付着があります。塵にある小さな孔は毛細管に相当し、孔が小さいほど低い相対湿度で水が凝縮します。
3.ハバキ下に注意すること。
異種金属接触腐食があります。これは鉄が他の金属(例えば銅)と接触していると錆びが促進されます。これには特にハバキの多くが銅で作られており、ハバキと刀身が接触するところで錆びを促進させます。
これらの要因で刀身を錆びさせないためには、無水アルコールや打ち粉を使って汚れや水気を取り除き、刀油を塗布することが肝要です。また塗布した油は長期間放置しますと乾きます、定期的に刀油を塗布しましょう。
また、居合での演舞では刀身に直接手を添える場合がありますから、演舞の終了直後の手入れが大事です。