軍刀の安かろう悪かろうは終わり

軍刀の人気は日本のみならず海外でも人気があり、多くの軍刀マニアがいます。
中国でも人気があって多くの軍刀が販売されました。兎に角、軍刀であれば本物でなく贋物でも物があれば売れたのが4・5年前までのことでした。

グループを組んだ中国人の古物業者が刀剣市場で買い集めを行い、そこに数ヶ月間隔で別の中国人バイヤーが訪れ、集めた軍刀を全て買い取っていくようです。そして彼らバイヤーは、軍刀を中国国内へ送り込んでいるのでしょうか。

こうした状況は長続きするはずもなく、最近では中国人バイヤーも玉石の見分けがつくようになりました。従って、刀剣市場での競りの事情も変わってきました。
当然、保存状態の良くない軍刀には、中国人業者も飛び付かなくなり、良い物だけに絞られています。特に九八式軍刀は数多に販売されたこともあり、安かろう悪かろうの時代は終わりました。

日本国内でも同様な事が言えますが、質の高い物が少なくなり入手が難しくなっている状況のため、程度の良い軍刀の確保は段々と厳しくなっています。

居合愛好家と文化財としての刀

刀剣を趣味とされる方は以前と比べると相当減っているのではないかと思います。それでも、刀剣を購入する方の中で、居合の稽古用に刀を求める方は多くいらっしゃる事でしょう。
居合刀は初級者の場合は模造刀を用いて練習を行いますが、上級者は真剣を使います。
その拵についても、真剣の場合は、自身の体格等に合わせて全てを新調し、刀身から拵までを現代製のものや、鍔・頭・縁・目貫等は古い時代のものを使った拵を作る場合、また、刀身や外装も時代のものをそのままで使用する人もいるでしょう。

居合の稽古用となれば拵え付であることが条件の一つですが、最近の刀の販売では殆どの刀は拵えが付いています。また、そうでなければ売れないと云う事情もあるのです。
拵えもピンからキリまでありますが、居合の稽古用でも良い拵えが欲しいと思うのが人情でしょう。
反面、昔から伝えられてきた物には、そのもが持つ文化財的としての価値の高い物がある訳で、大切に保存し、後世に伝える事も大事です。

ある方が言っていました。居合刀の拵え製作を依頼するのに、金象嵌の入った良い鍔を持参し、これを入れて作ってくださいと言ったところ、「居合をする人は、その良い鍔を居合拵えに使って、稽古で鍔をダメにしてしまうから、俺は拵えは作らない」と職人に言われたと話してくれました。
実際に、縁・頭・目貫から鍔・鐺まで在銘の一作物の、刀身ともに製作当時のままのものですが、居合の稽古用にと求める方にはお断りをしていたものがありましたが、仲々良い人と巡り合うことがないので、ついには、居合の稽古用にと求める方に譲りました。
あの拵えも何れ稽古でダメにされてしまうのか思うと何とも言えぬ寂しさがあります。
また、刀身重量を気にして、やたら刀に樋を掻くことも往々にあります。居合を為さる方は、刀身や刀装具を文化財としての価値の認識が希薄ではないかとさえ思ってしまいます。
居合の稽古向きの刀や拵えはありますから、もう少し意識を変えて頂き、文化財を大切にする心を持って頂けたらと思ってます。

銃砲刀剣類登録証の内容と現物が違っている

登録証の記載内容が現物と違っている場合があります。
例えば、目釘孔の数が違っている、銘文の中で一文字が違っている、反りや長さが違っているなどがあります。
こうした場合、少々の相違であるならばそのままでも持ち主が承知していれば問題にはならないでしょう。大事なことはその刀に登録証が付いていることなのです。
しかし、どうしても気になると云うならば登録証を訂正することになります。それには、登録証に記載してある教育委員会に申し出て審査を受ける必要があります。
申し出があると、東京都の場合、「銃砲刀剣類登録証鑑定申請書等の送付について」と題した文書が届き、その中に手続方法があります。

手続としては、
送付された書類を作成し提出します。
審査会の通知の案内状を受け、指定された審査会場へ出向きます。
審査で銃砲刀剣類のデータを採取し、銃砲刀剣類のデータと東京都の原票の記録と照合し、どの様な処理を行うか決定します。
基本事項がすべて一致し、銘文の記入上の誤りであったことが確認できたときは、無料で訂正の処理を行います。

目釘孔の数が登録証では2個ですが、現物は3個あり相違があるので審査を受け、登録証の訂正を無料で行ったものがあります。反りが1mm、前とは違いますが、測定誤差であり、刀の外装も原票と同じであることから、一致していると判断しています。
教育委員会にある原票には、登録証の記載内容の他に、地鉄や刃紋・製作時代がありますが、外装も記録されていることが今回の事で知りました。

最近、登録証の訂正を行った例を紹介します。
登録証の番号は訂正後も訂正前と同じです。訂正された登録証には裏側に訂正印がおされています。
訂正前の登録証訂正後の登録証訂正印の登録証

奥多摩美術刀剣保存会の日本刀展示会

展示会
奥多摩美術刀剣保存会の発足は昭和26年11月17日に創立した歴史のある刀剣愛好家の会です。

昭和初期頃の西多摩地域では刀剣鑑定会が屡々行われ、刀剣を趣味とする方々が競い合っていましたが、世の情勢が戦争へと向かう中、自然と行われなくなったようです。
戦後、刀剣が再び民間でも所有することが出来るようになると、いち早く会を立ち上げています。
昭和30年2月15日の地方新聞(福生新聞)には、奥多摩美術刀剣保存会について、会員数80名、会長には青梅市の市長である中村氏で、都内各所で刀剣展示会を行っているとの記事を掲載しています。

今回の刀剣展示会は、昨年同様に青梅信用金庫の施設を利用さて頂き、下記のとおり行います。また、開催に当たり当店も協力させて頂いております。


■刀剣展示会
■日時:平成30年11月4日(日) 午前9時~午後5時
■会場:青梅信用金庫本店ギャラリー
東京都青梅市勝沼3-65
JR東青梅駅より徒歩6分

■入場無料

戦跡としての軍刀

毎年8月になると終戦記念日とともに、太平洋戦争の記憶を忘れまいとする報道で様々な紹介がなされます。
今年は、昭和20年8月15日の終戦より73年目、昭和から平成の時代に変わり30年、最後の平成時代の終戦記念日となりました。
今、戦争体験者の年齢は90歳越え、戦争の悲劇を伝える人が少なくなりました。
実際あった戦争をどう伝えていくのか。二度と繰り返してはならない悲劇を、そうした動きの中、今、戦跡が注目されています。
例えば、気が付かないでいるが身近にもある高射砲の土台跡であるとか、海底から引き上げた軍艦の砲身であるとか、それらを保存していく中で、戦争を知らない人に実際に過去にあった戦争を知ってもらおうとしています。
こうした取り組みにあって、最も身近に個人で実感できるのが軍刀ではないでしょうか。
これからは、軍装コレクターもいるでしょうが、それとは別の意味で、軍刀は昭和の歴史を留めた物として、個人で持てる唯一の戦跡との評価を得ることになるでしょう。状態の良い軍刀は少なくなり、入手が難しくなってきています。ますます大切に後世に伝えて行くべきもとなりました。